NHKの連続テレビ小説『風、薫る』。第13週の第62話では、前話で涙の訴えを起こした看病婦・須永ツヤ(東野絢香)の運命が大きく動き出すとともに、正看護婦となった一期生たちが「自分の力で生きる」という現実的な一歩を踏み出しました。
ツヤを巡る4人の決断、明治時代における「夢」という概念の先進性、そして一ノ瀬家に訪れる変化のきざし。涙と笑顔、そして少しの不穏さが交錯した本話を詳しく解説します。
主要キャスト&登場人物の動きと物語への影響
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奥田りん(キャスト:見上愛)
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ツヤの熱意を背負い、「私が責任を持つ」と院長に直談判して特例を勝ち取ります。
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大家直美(キャスト:上坂樹里)
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家賃を払おうとするなど自立のプライドを保ちつつ、りんの家族の温かさに触れて苦笑いを浮かべる一面も。
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須永ツヤ(キャスト:東野絢香)
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4人のナースたちの尽力により、特例で看護科の講義を受けることが認められ、ついに念願の教室の席へ着きます。
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島田健次郎 / シマケン(キャスト:佐野晶哉)
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ついに渾身の小説を書き上げますが、最初に見せたかったりんに会えず、すれ違いの切なさを滲ませます。
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第62話のあらすじ:掴み取った特例と、自らの力で得た10円
看病婦・ツヤ(東野絢香)からの「看護婦になりたい」という強い希望を受け、りんと直美、そして多江(生田絵梨花)とトメ(原嶋凛)の4人の正看護婦が集まって話し合いが行われました。身分や規律に厳しい多江は反対するかと思われましたが、ツヤのこれまでの仕事ぶりと熱意を認め、意外にも賛成に回ります。
4人の意見が一致し、りんは院長(筒井道隆)のもとへツヤの看護婦修業の申請に出向きます。「何か問題があったら、取締りである私が責任を持ちます」というりんの不退転の覚悟に押され、院長は今回「特別」に、ツヤが働きながら看護の勉強をすることを許可するのでした。 さっそく始まった「換気と空気」についての講義中、教室の扉が開き、緊張した面持ちのツヤが入ってきます。りんと直美が嬉しそうにツヤを生徒たちに紹介すると、ツヤは深い一礼をして、念願だった看護の席に着くのでした。
帰り道りんが瑞穂屋によると卯三郎(坂東彌十郎)が、身近な医療関係をターゲットにした新たな事業を計画していることが判明します。事業が軌道に乗れば、いずれこの家を出ていくことになりそうな気配に、一ノ瀬家の面々は寂しさを覗かせます。
夜、りんと直美は、新人生徒たちが口々に「看護婦になるのが夢」と語っていたことについて語り合います。当時はまだ世間一般に「夢」という概念や言葉そのものが広く浸透していない時代。自分たちの意志で未来を選ぶ生徒たちの姿に、時代の大きな変化を実感する二人でした。
やがて、正看護婦となって初めての「給金日」が訪れます。4人が揃って給与袋から中身を出して数えてみると、入っていたのは「10円」。看護科の先生(取締り)まで兼任している役職にしては安いと多江は不満を漏らしますが、多江は「ここから出世して、自分たちの手で看護婦の待遇を改善していこう」と前を向きます。
りんはさっそく、その初給金10円を母・美津(水野美紀)に手渡します。「少し安いようですが……」と恐縮するりんでしたが、美津は娘が「自分の力(職業)」で稼いできたその10円の重みを引き受け、「この戦さ、当方に優勢である」と、一ノ瀬家らしい力強い言葉でりんの自立を祝福するのでした。 居候の直美も「家賃を払います」と財布を出しますが、美津はそれを受け取りません。直美は、かつて「給金が出たらこの家を引っ越す」と卯三郎と約束していたことを思い出し、一ノ瀬家の居心地の良さに後ろ髪を引かれながら、複雑な苦笑いを浮かべるのでした。
一方、シマケン(佐野晶哉)はついに執念の小説を書き上げていました。完成した原稿を抱え、胸を高鳴らせて思い出の団子屋へと向かったシマケン。一番にりんに見せて報告したかった彼でしたが、待てども待てどもりんは現れず、すれ違いのまま寂しく帰路に就くことになります。
シマケンが去った後、夕暮れの団子屋の通りを、足音を響かせて歩いていく「軍人らしき男」の姿が。時代の歯車が、静かに、しかし確実に回り始めようとしていました。
第62話の見どころ&興味深いポイント
① 多江の賛成と、ツヤの「換気と空気」からのスタート
規律の鬼である多江がツヤのために賛成し、りんが「責任を持つ」と言い切る一期生の絆が熱いです。ツヤが最初に受ける講義が、近代看護で最も重要視される「換気と空気(環境衛生)」である点も、ナイチンゲールの精神を汲んだ心憎い演出。
② 初給金10円と、母・美津の「当方に優勢」
明治中期の10円は現在の価値で数万円程度。正看護婦の専門職としては確かに多江の言う通り格安ですが、男社会の中で女性が「自らの技術で掴んだ初めての自立の証」です。それを手にした母・美津の「この戦さ、当方に優勢である」という武士の娘らしい最大級の賛辞が胸を打ちます。
③ シマケンのすれ違いと、通り過ぎる「軍人の影」
小説を書き上げたりんに一番に見せたかったシマケンの不器用な恋心が切ないです。しかし、その直後に団子屋の通りを歩く軍人の描写は、今後の物語が「日清戦争」などの戦時救護編へと突入していくことを予感させる、非常に不穏で重厚な演出となっています。
第62話のまとめ:自立の喜びの裏で、変わりゆく時代と新たな足音
第62話は、ツヤが新たな一歩を踏み出し、りんだちが初給金を手にするという「女性の自立と夢」が形になった素晴らしい回でした。家賃を断られた直美が一ノ瀬家に絆され始めている様子も微笑ましいです。
しかし、シマケンとのすれ違い、そしてラストの軍人の登場は、彼女たちがこれから「戦場ナース(従軍看護婦)」としてのさらに過酷な運命に巻き込まれていく大きな前兆と言えます。
夢を抱いて走り出した彼女たちの前に、一体どんな時代の荒波が押し寄せるのか。次回の放送からも目が離せません!


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